Iridium NEXT
概要
Iridium NEXTは、イリジウム・コミュニケーションズが開発した次世代低軌道周回衛星コンステレーションである。地表から高度約780kmの上空に66機の衛星を配置して、地球全域で音声・データ通信サービスを提供することを目的としている[1][3]。総額30億ドルの投資により、2014年から2019年にかけてスペースXのファルコン9ロケットを使用した8回の打ち上げで完成した[3][6]。従来の第一世代イリジウム衛星と比較して、データ転送速度が50kbpsから1920kbpsに向上し、衛星機材の小型化・軽量化・省電力化が実現されている[3]。航空機や船舶など携帯基地局が届かない地域での通信を可能にするほか、将来的には航空交通管制通信への利用も想定されている[1]。
この宇宙機に搭載されているコンポーネント一覧
軌道制御ユニット
衛星の軌道を維持・調整するための小型推進エンジンである。低軌道での大気ドラッグ補償や軌道調整に使用される。
熱制御ユニット
衛星内部で発生する熱を宇宙空間に放射するためのラジエーターである。安定した温度環境を維持することで、電子機器の信頼性を確保する。
電力制御ユニット
衛星の全機器に電力を供給するための太陽電池パネルと蓄電バッテリから構成される。低軌道衛星のため、地表からの距離が近く、電力効率が重視される。
通信機器(衛星通信)
イリジウム・サータス衛星通信サービスを提供するためのLバンド帯での送受信機である。変調方式としてQPSK および16APSKに対応し、従来の50kbpsから1920kbpsへの高速データ通信を実現する[3]。
通信機器(衛星間通信)
隣接する衛星との間でデータを中継転送するための通信機器である。衛星間通信によって、地表から遠く離れた場所の衛星でも、ネットワーク全体を通じて地上ゲートウェイと通信することが可能になる[4]。
姿勢制御ユニット
衛星の姿勢(方向)を制御し、常にアンテナを地球に向けておくために必要なコンポーネントである。スピンスタビライゼーションまたはリアクションホイールを使用して安定化を実現する。
データ処理ユニット
衛星の全体的な動作を制御し、受信したデータの処理・ルーティング・転送を行うコンピュータである。高速データ転送に対応するための処理能力が要求される。
観測機器(地上予備)
地上に保管される予備衛星であり、将来的に衛星の交換が必要になった場合に打ち上げられる[6]。低コストかつ短期間での打ち上げが可能な小型ロケット(テラン1など)の活用により、迅速な対応が実現される。
観測機器(軌道予備)
軌道上の故障衛星に対応するために配置される予備衛星である[6]。運用中の衛星が劣化した場合、新しい衛星を打ち上げるまでの間、これらの予備衛星がネットワークの継続性を確保する。
観測機器(通信衛星)
地球全域をカバーするために6つの軌道上に11機ずつ配置される低軌道周回衛星である。重量は約860kgで、第一世代イリジウム衛星よりもグレードアップされた性能を有する[4]。衛星間通信により、地上の端末からの信号を最も近い衛星が受信して他の衛星経由でゲートウェイに転送することで、グローバルな通信ネットワークを実現する[4]。
地上ゲートウェイ
地上と衛星ネットワークの接続を担当する地上施設である[4]。地上の端末からの信号をイリジウム衛星ネットワークに接続し、また衛星ネットワークからの信号を地上ユーザーに転送する。米国アリゾナ州のテンペに位置し、全球ネットワークの中枢となっている。